MICHIKO D ILIEVA

ありがとう。

伊達路子(MICHIKO DATE ILIEVA)
岡山県出身
職業:オペラ歌手・声楽家・声楽教師
IMA ミュージックアカデミー主宰
『Vocal Mechanics(声のメカニズム)』講師
ブルガリア、プロブディフ在住

子供の頃から歌うことが好きで、合唱で歌い始めるも、私だけが別格に歌が上手だったので、周りの声と溶け込めず、一人で歌う声楽に興味を持ち始める。
高校に入学すると同時に、声楽の個人レッスンを開始する。先生に進められるままに、東京芸術大学を受験し合格。今から考えると、この頃の私は、なかなか上手に歌えていたと思う。
大学入学後は、周りの同級生たちの一体感や、熱気、やる気、競争心などについていけず、自分の居場所を見つけられなかった。上手になろう、という思いばかりが空回りし、どんどん自分を見失っていった。
東京芸術大学という多くの人が憧れる大学に入学したものの、そこは競争のスタートラインにすぎず、この先も、修士課程、博士課程、オペラ研修所、歌劇場本会員、と次々と狭き門を突破し続けなければ先への道はない、という現実に心が曇る。自分の小ささを知りながらも、自分を大きく見せなくてはこの荒波を乗り越えていけない、という状況に疲弊していくと同時に、この先に私の幸せはあるのだろうか?という疑問を抱く。

日本という環境に居ては、この先の希望を見出せない、どこでもいいから、とにかく日本以外で勉強をしたい、という衝動から留学を決意。
これまた狭き門を突破し、ニューヨークのマネス音楽院へ入学することができた。
音楽院でのバラエティ豊かな教育カリキュラムに感動するも、学生生活は、次から次へと授業やいろいろな先生たちのレッスンを渡り歩き、多忙を極めるものだった。

ある日突然『失声症』になる。
その結果、私にはプリンシパル(核となるもの)が備わっていない、育まれていないという現実を知るも、何をどうしてよいのかは分からないままだった。
とにかく前へ前へ、努力することで成果を出せると思っていた私は、『失声症』になるまで、自分の心と体のバランスが崩れていたことに気づけなかった。ところが、歌うどころか、喋ることすらできなくなったにも関わらず、『あ、私もう歌わなくていいんだ。』と、どこかホッとした自分がいた。

大学院を無事に終了したものの、「これから先私は歌手として生きていけるのだろうか」と、なんの希望も見出せないまま、1年を過ごしたある日、フランコ先生に出会い人生が変わる。はじめてのレッスンで、『全然違う。今まで習ってきたことと全然違う。でも私の身体の奥深いところが喜んでる。私が探してたものはこれに間違いない。』と衝撃を受ける。
『学ぶってこういうことだったんだ。』とはじめて自分の確かな歩みを実感する。毎回毎回のレッスンが新鮮な発見と気づきで、喜びに満ちていた。それは本来の自分に出会い、その自分をさらに深く掘り下げていくようなプロセスだった。

自分にこんなことができるなんて思ってもみなかった。
これが私の声なの?私の声ってこんなに大きかったの?

今まで知らなかった自分に次々と出会えるような感覚で、レッスンはワクワクの連続だった。
けれども、そんなときに顔をもたげるのが、以前の私。
私が積み重ねてきてしまった体験から、知らず知らずのうちに潜在意識に刷り込まれてしまった『不安、怖い』という感情は、私の成長過程をどんどん邪魔してくる。
喜びに満ちた学びのプロセスは、同時に、自分の感情と向き合う試練でもあった。たとえ何かが大きく良く変わっても、すぐその後には大きな負の感情という波に飲み込まれてしまう自分がいた。まるで自分で自分の成長にストップをかけている感じだった。
けれども、このプロセスの先の景色をどうしてもみたい、という情熱は変わることなく7年という年月を経て、自分の楽器(声)を機能させるための『声のメカニズム』を体得するまでに至った。

その後、フランコ先生監修の元、リサイタル、オペラ公演などを数多く体験し、声のテクニックだけでなく、メンタルも含めた総合的なアプローチから、プロフェッショナルな音楽家として、本番を迎えるにおいて必要な準備のプロセスを経験する。
そんな私の今までの経験や、喜び、苦しんだ学びのプロセスが、私のように多くの悩める音楽家の人生を救うことができるならば、彼らの音楽人生を輝かせることに生かせるならば、それほど有り難く嬉しいことはない、と思い始める。

その後、夫でクラリネット奏者のILIAN ILIEVと共に、彼の故郷であるブルガリアのプロブディフへ移住する。
自然体なブルガリア人たちと、毎日が喜劇のような暮らしを体験し、自分にとっての『自然体』な在り方を発見する日々の中で、音楽がいかに自然と共にあるかを実感、体感する。
自然体であることで、私たちは本来の才能や能力をより発揮できる、ということに気づくと同時に、自己成長のために私を前へ前へ、外へ外へと向かわせていた意識が、内へ内へと本来の自分の在り方を掘り下げていくという姿勢に変わっていく。

人に認められるため、何かを成し遂げるためではなく、自分がより自分に還っていくこと、つまり原点回帰することで、気づけば自分はずっと先の自分へ到達している、という成長の在り方を多くの人々に見せていくこと、そして体験してもらうことを目的に、ミュージックアカデミーを開講。

2020年からは、IMAミュージックアカデミー、と名称を新たに『楽器を、そして自身を正しく使うことで、機能する。』をプリンシパルに、夫と共に日本で指導活動を展開していく。

 

Chie*Integrated Music and Arts IMA · L.Spohr Six German Songs Op.103