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声を磨くには時間が必要!ベルカント唱法が衰退したわけ

声を訓練するには時間がかかる。
声の訓練には時間をかけた方がいい。

このようなことを言われたり、
聞いたりしたことのある人も多いと思います。

けれども実際には、

なぜ時間をかけなくてはいけないのか?
どのようなことに時間がかかるのか?

については、
あまり語られることはありません。

当然、ただ時間をかければ良い、
というわけではありません。

自分が何をやっているのかも
分からない状態で
ただ努力をしても、
それでは無駄に時間が流れていくだけのことです。

必要なことを積み上げていくための時間
でなくては意味がありません。

音楽家として真剣に、
着実に歩みを進めていきたい、
と思う人向けです。

なぜ、時間がかかるのか?

人はいきなり一流を目指すことはできません。

そんなの当たり前のこと、
と思うかもしれません。

けれども意外にも、
多くの音楽家たちは、
自分のステージを上げていく、
ということを意識していません。

良くなっているとは思えないまま、
ただ今まで通りの
練習を重ねていたり

学生時代の意識のままで、
先生に言われたことを
その通りにできるようになることが
成長だと思っていたり

誰かに褒めてもらったり、
認めてもらうことでしか、
自分の成長を確認できない人もいます。

コンクールなどで、
人と競い合うことで、
成長した気になっている
場合もあります。

それではどれだけ時間をかけても
次のステージへは上がっていけません。

たとえば3流の人が、
いきなり一流を目指すことはできません。

もし一流を目指したいのであれば、
そのための然るべくプロセスを
一歩一歩確実に、
辿っていく必要があります。

けれども自分一人で
このプロセスを経験し、
ステージを上げていくことは、
とても困難なことです。

ここでは、
誰と出会い、
誰に教わるかが
鍵を握ります。

次のステージへ引き上げてくれる
指導者と出会っていくことは
とても大事なことです。

学生→プロの音楽家→成熟したプロの音楽家
というように、
音楽家としての転換期を
スムーズに導いてくれるのが、
良い指導者です。

技術を磨き、
テイストを磨き、

それに伴って、
情熱が生まれ、

思考が変わる。

それら全てのスペックが、
同時に磨かれていくことで、
ステージは上がっていきます。

そのためには時間がかかります。
そして、時間をかける必要があるのです。

ああ、なんでここから先が上手くいかないんだろう?
ああ、また遠回りしてしまった。

こんなことはしょっちゅうあります。

でも、このプロセスを
どれだけ楽しめるか、
そして、
遠回りしたけど
良い経験が出来たな、
と思えるかがとても大事なことなのです。

なぜ、基礎が教えられていないのか?

このプロセスにおいて、
もっとも大事なことは、
基礎を学ぶということです。

そのためには、
慣れないことに
取り組まなくてはいけません。

そして、それははっきり言って
骨の折れるプロセスです。
決して楽しいばかりではありません。

苛立ちやフラストレーションを
覚えることもあると思います。

最初はベイビーステップのような
小さな歩みにしか
感じられないかもしれません。

けれどもその感覚こそが、
本当に前へ進んでいっているときの
ものだったりします。

基礎とは、歌の場合、
体を楽器として正しく
機能させることです。

しかし実際の教育現場では、
この大事な基礎が教えられていない、
というのが実情です。

なぜそのような事態に
なってしまったのか?

それは私たちが
結果を直ちに求めているからです。

世の中の流れが、
合理性や効率性を
重視するようになった昨今、

本質はすっ飛ばされて、
安易にそれっぽいサウンドで、
それらしく歌う方法が
蔓延してしまったのです。

体全体を機能させるための
長いプロセスも必要ありません。

とにかく結果を出すこと、
それっぽく形になればそれで良い、
という考えが、
必要なことを積み上げていく時間を
奪ってしまったのだと思います。

結果主義によって心と体は壊れる

明るい響きで
もっと遠くへ声を響かせて


もっとレガートに

ここはもっと力強く、フォルテで
ここはもっと優しく、ピアノで


もっと表現豊かに
感情を込めて

レッスンで、
こんな風に言われたことのある人は多いと思います。

けれども実は
こういう指導は、
単に結果を求めているだけのものです。

結果を言うだけなら
誰にでも言えます。

指導するためには
レガートひとつとっても、

どのように喉の筋肉を使い、
どのように体全体を機能させ、
どのようにサウンドを生み出し、
どのように音を繋ぐか。

その細かな方法(HOW)が
教えられていなければいけません。

もっとレガートに!
と結果を求めたところで、
それを導き出すまでの
プロセスが教えられていなければ

それは本当の意味での
指導とは言いません。

けれども残念なことに、
生徒も、
結果を求められることが
当たり前になっています。

方法(HOW)が存在することも、
それを習得するためには
時間がかかる、
ということすらも知りません。

そして、そのための方法は
自己流で学んでいくしかない、
自分でやっていくものだ、
と思っています。

できないのは自分のせい。
自分に才能がないから。
自分の努力が足りないから。

それは、生徒の心に、
不十分感、不足感、無価値感を
植え付けることにもなります。

そしてそれを補うために、
もっと成長しなくては!
と追い立てられるようになります。

けれども、
たとえ一時的に良くなったとしても、
不足感がベースにあると、
いつまでたっても満足することはできません。

結果を求めているから、
どれだけ努力しても、
いつでも何かが足りないのです。

それが、心と体のバランスが崩れていく原因です。

ベルカントとモダン歌唱

ベルカントが衰退したのも、
結果主義によるところが
大きな理由だと思います。

ベルカント唱法
という言葉を聞いたことはあっても、
ベルカント唱法の定義についてまでもは、
はっきりと知らない人が多いと思います。

ベルカントオペラと言われる
ベッリーニ、ドニゼッティ、ロッシーニ
の作品の魅力を
より引き出すための歌唱法
とも言われています。

けれども実際のところは、
ベルカント唱法、
という何か特別な型があるわけではなく、

ベルカント唱法と
それ以外の唱法、のように、
何か特別な違いがあるわけでもありません。

ベルカントとは、
文字通り
美しい歌声です。

正しく機能している体全体から
生み出される歌声は、
無条件で美しい歌声です。

そしてそのルーツは、
オールドスクール歌唱
Old Italian School 
と言われる、
イタリアの伝統的な歌唱にあります。

オールドスクール歌唱の特徴としては、

  • 無理のない、力みのないサウンド。
  • 良くコントロールされたアーティキュレーション。
  • 幅のあるダイナミクス。
  • 彩り豊かな、ボリュームのあるサウンド。
  • 歳を重ねてもずっと歌い続けることができる。

などが挙げられ、
今ではそれを指導できる人は、
世界でも数えるほどしかいない。
と言われています。

伝統的な歌唱を受け継ぐ経路は、
指導者がいなくなったことで、
途絶えてしまいました。

その結果、
現在ではオールドスクール歌唱は
すっかり下火になり、
モダン歌唱が主流になっていきました。

モダン歌唱とはどのようなものを言うのでしょうか?

全世界ほぼすべての
音楽大学などの教育機関では、
モダン歌唱が教えられています。

息を流して、
喉をリラックスさせて
声を響かせるように歌う

というのはよくある指導です。

マイクロフォンの進化や、
コンサートホールなどの
音響設備の発展に伴い、
声の力強さは以前より必要なくなりました。

モダン歌唱では、
体を楽器として機能させるための
長いプロセスを経ることなく、
それっぽい音響効果を得ることができます。

でもそれは言ってみれば
人工的に作られた、
小手先のテクニックでもあります。

そしてその音色は、
誰かと似たような、
どこかで聞いたことのあるような音色
にしかなりません。

つまり、現代では、
演奏する側も、それを聴く聴衆も、
薄っぺらい音楽に耳が慣らされている、
ということです。

締め 時間をかけることの大切さ

ここで、もう一度声を大にして
言いたいことは、
時間をかけることは大切なこと、
ということです。

時間をかけて本質に取り組むこと。
そして、そのプロセスを楽しむことです。

できなくても良いんです。

すぐにできるようなことなら、
そこまでの時間はかかりません。

ただ今ある自分を受け入れて、
できない自分も認めることです。

このプロセスを楽しめるかどうかで、
幸せな音楽家でいられるかどうかが
決まります。

なぜなら、学びに終わりはないからです。
ゴールはありません。
音楽家としての学びは
これからもずっと続いていくんです。

まだ足りない、まだ足りない、と
結果=ゴールを目指し続けていると、

いつまでたっても「まだ足りない人」、
から抜け出せなくなります。

一流と言われる人は、
そもそも一流を目指してはいません。

ただその道を情熱のままに追い求めているだけ。

それが一流の生き方なんだと思います。

結果主義でいるうちは、
本当によく変わっていくことは
できないということです。

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