声のメカニズム 歌うことの原理

Vocal Mechanics / 声の機能
発声のメカニズムを体得していく上で、声楽発声を学び始めるみなさんに知っておいて欲しいことを、これからいくつかに分けて書いていこうと思います。
まずは、歌うことの原理についてのお話です。

私たちにとって、歌うということはどんなことなのでしょう?

まだ言葉を喋り始める前の赤ちゃんが、まるでメロディーのような音を口ずさむのを聞いたことがありますか?それはまるで歌っているかのように聞こえます。

 

原始時代、人は誰しも歌ったそうです。

それは、私たちが、言語を使い始めるよりも前のことです。

メロディやリズムにのせて、様々な感情や求愛を表現していたようです。

歌はコミュニケーションの道具として存在していたのです。

人は誰しもが、生まれつき歌手でした。

歌うことは人類に備わった属性であり、私たちの本能そのものなのです。

 

言語を話すことのためだけに、発声器官が作られたとするならば、

こんなにも込み入った機能は必要ありません。

発声器官は歌うために作られ、そのために進化を遂げてきた、と考える方が自然です。

 

そして、歌うための発声器官は、誰しもが天から平等に与えられたものです。

偉大なオペラ歌手だからと言って、特別な発声器官を兼ね備えているわけではありません。

『生まれついて声がある人。』『声がない人。』

というのは存在しないのです。

なぜ私たちの本能である、歌うことが、私たちの日常から取り払われてしまったのでしょう?

それは私たちが、言語を急速に発展させたことが原因です。

本来歌うために作られた発声器官の機能は、言語を話し始めたことによってどんどん減退し、音声衰弱症にかかってしまったのです。

発声器官の第一の本性とも言える「歌うこと」は、「話すこと」に取って代わられ、

その結果、発声器官の機能は弱まり、無力状態に陥ってしまった、ということです。

どんな機能でも、使われずに眠っていると、ただ眠っているだけではなく、それは弱り、生気は失われ、挙げ句の果てには忘れ去られてしまうのです。

今では、現代人は『音声衰弱症』にかかっているのが通常になってしまっています。

このことから、歌声を作っていくという過程は、言ってみれば、『治療』である、と言えるのです。

声のトレーニングとは、私たちにとって、本来の発声器官の機能を取り戻すための、再生の過程ともいえます。つまりそれは、発声器官を、自然が意図した状態へ戻すことなのです。

声のトレーニング=『病気』→『治療』

声の調子を度々崩しては、耳鼻咽喉科の常連になっている学生さんやプロの歌手も多くいますが、本来、声の治療にあたるのは、発声の先生の仕事です。

お医者様はその症状を診ることはできるかもしれませんが、喉の使い方までを治療することはできません。一時的に薬や休息によって症状を緩和させることができたとしても、喉が正しく機能していなければ、再び同じ問題が起こってしまうのは目に見えています。

多くの歌手たちが耳鼻咽喉科へ通わなくてはならない、という現状からも、良い発声教師が存在していない、ということが同時に言えると思います。

発声器官に、生理学的に正しい運動を練習させることによって、非生理学的な運動を取り除いていくことでしか、本当の意味で『声の治療』をすることはできません。

忘れ去られたもうひとつの機能とは?

発声器官の機能だけでなく、もうひとつ忘れ去られた機能があります。

それが『聴覚』です。

『聴覚』は私たち人類にとって、最も原始的な機能と言えます。

ところがやはり、言語を話し始めたことにより、現代人は、耳よりも目(視覚=思考)が優勢になり、『聴覚』はすっかり弱ってしまいました。

耳はもはや、歌うための器官について、感じとることができないほどに、無力になってしまったのです。

そのため、声の治療(声のトレーニング)の過程において、まず取りかからなければならないことは、歌うときの発声器官の働きを耳で聞き分けることができるようになるまで、聴覚を呼び覚まし、再生させる、ということです。

逆に言うと、聴覚が眠った状態のままでは、発声器官の機能を取り戻すことはできない、ということです。

正しい発声と誤った発声の違い

私たちの発声器官は『歌の道具』として、自然に設計されたものです。

本来自然に、予定された働きをしている状態のことを、『生理学的に機能している』と言います。

だから歌うことの中には、生理学的に正しいことと、誤ったことが存在します。

 

感覚的な判断で、正しい、誤っている、と判断することはとても危険です。

あくまで、生理学的な機能に基づいて、その正誤は判断されなくてはいけません。

声楽発声において言えば、様々な発声方法に対して、『違いこそあれど、どちらも正しい』、とはいきません。そこはやはり、

生理学的に機能している=正しい。自然である。
生理学的に機能していない=誤っている。自然ではない。

ということに尽きると思います。

そして、『自然にうたう』ということこそが、歌手が目指すべく、究極の真理である、と言えるのです。

歌うと元気になる理由

歌を学ぶということは、私たちの中に眠っている本能を呼び覚まし、人としての生気を取り戻させる、ということでもあります。

狭いところに押しやられ、閉じ込められてしまった本能を解き放ち、自由に開放する、ということです。

そう考えるとワクワクしませんか?

だから、歌うと元気になるのです。

 

身体全体をうたうために機能させるには、とても長い時間やエネルギーを要します。

けれども、眠っている本来の自分の可能性に出会っていくプロセスは、気づきと喜びの連続です。

私の声ってこんな声だったんだ!

私にこんな事ができるなんて思ってもみなかった!

というような『感動体験=気づき』を積み重ねていくことでもあります。

うたうことは、自分の中に本来の力を取り戻していく、ということなのです。

 

そして最後にもう一度、うたうことのために必要なことの全ては、すでにあなたの中に存在しています。外から何かを付け加えることなど必要ないのです。

うたうことの能力を開放するためには、発声器官に本来の機能を発揮してもらうこと以外には、何もないということです。

 

 

コメント

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